プ ロ ロ ー グ
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 高速戦艦、『超高速化計画』。
 長門型や大和型の超弩級戦艦の装甲をもってしても、戦艦レ級や戦艦棲姫等の強力な深海棲艦の攻撃を受ければ一撃で大破してしまう。
 軽巡洋艦や駆逐艦の身軽さならば攻撃を回避する事も可能だが、如何せん火力が足りずに撃破する事が非常に難しい。
 そこで計画されたのが本計画だ。
 高速で回避能力も高い金剛型の高速戦艦を小型・軽量化する事で更なる速度と回避性能の向上を目指した。
 試作されたのは三番艦・榛名。



 予定通りに小型化は成功したのだが……小型化の影響で注排水口までが小型になってしまったのだ。
 戦艦クラスの重装備で速力を維持する為には、相応の注水・排水が必要になる。
 改修しようにも戦艦の装甲は柔軟性に欠けている為、ほぼ不可能に近い。
 欠陥艦の烙印を押された榛名は解体が決定されてしまう。
 だが榛名が配属される予定だった鎮守府の提督は本部に解体中止を陳情。
 注排水口の拡張改修を成功させる事を条件に仮配属を承認された。
 解体の決定を聞いて覚悟していた榛名は、迎えに来た提督の笑顔を見て泣き出してしまった。
「恐かったな。だが、もう大丈夫だ」
「榛名はっ、榛名は……大丈夫ですっ」
 ギュッと抱き締めてやると安心したのか、表情を和らげて笑顔を作って見上げる。
 愛らしくも儚い、そんな少女の笑顔を守りたいと心から願う。
 榛名の解体中止はあくまでも仮のものだ。改修を失敗した場合には予定通り解体されてしまう。
 彼女を解体させない為にも、練成を必ず成功させなければならないと提督は気を引き締めるのだった。


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