03

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

赤子の頃のランスロットは、揺り篭に入れられたまま湖のほとりに捨てられていた。

揺り篭の中にはランスロットが高貴な身分の子であることと、彼の父が治める領地が異民族であるオーク族とゴブリン族の侵略によって滅んでしまったことを記した手紙と、身分を証明するための手の込んだ銀細工の装飾品が入れられていた。

湖に住む気まぐれな妖精族に拾われたランスロットは、妖精族の女王ニミュエに気に入られ大切に育てられることになった。

 

妖精族は羽虫のような小ささの者ではなく、大きさは人間とさほど変わりは無い。

人間と大きく違うところは種族が女性のみで構成されていることと、多少の差異はあれど背中に蝶の様な模様の羽が生えていること、寿命が長く、悪戯と蜂蜜と人間の美少年が大好きなところだろうか。

他人を惑わしたり加護の魔法によって補助することが得意な、この世界のメジャーな種族の一つだ。

 

幼少期のランスロットは彼女たちから大いにモテた。

同世代の妖精たちにちょっとエッチな本を読まされたり、年上の妖精のお姉さんにいけない遊びをしましょうと誘われては赤面していることをからかわれたり…そんなことが日常茶飯事だった。

ランスロットのファーストキスも女王ニミュエがいただいてしまい、そのことを知った側近たちが女王を8時間以上説教することなどもあった。

皆がランスロットを愛しており、幸せな日々を過ごしていた。

 

妖精族の寵愛を受けて育ったランスロットは、品行方正で剣の腕も立つ非の打ち所のない絶世の美少年に成長した。

かつてとある異世界で淫魔と戦いその世界を救った英雄と同じ名前を持つ彼ならば、オーク族やゴブリン族の侵略や貴族の内乱に苦しむこの国に救いをもたらす英雄となるだろう。

ランスロットを知る誰もが、その輝かしい未来を予想していた。

 

 

しかし、彼が旅立つその前日に悲劇は起こった。

 

 

世界と世界を繋ぐ「門」を辿り異世界から突如現れた両性具有の淫魔の古代種族「双成種」が、ランスロットと妖精族の暮らす湖に侵攻してきたのだ。

露出の多い扇情的な衣を纏ったものも居れば、全身を魔術の刻印が施されている鎧で覆ったものもいるおおよそ統一感のない集団に思えたそれは、高度な統率力を持つ指揮官に命じられているかのようにほとんど乱れぬ動きを見せた。

霧の加護の魔法で護られていた湖の城の結界を容易く破り、双成種の軍勢は妖精族に襲い掛かった。

 

美しかった城は三日三晩消せない水の中でも燃え続ける魔法の火に包まれ、城の貴重な装飾品やオブジェ等は双成種の軍勢が連れてきたのであろう巨大なスライムたちが体内に呑み込み、袋代わりに貯蓄するように貪欲に奪っていった。

若きランスロットやニミュエは侵略者たちを相手に懸命に戦ったが、人間の男よりもはるかに強い腕力と、並の妖精よりも強い魔力を持つ双成種たちになす術もなく妖精族は追い詰められた。

ダメージを痛覚ではなく快感に換える双成種の特性で妖精族はたちまち絶頂し地に伏せられ、双成種に組み伏せられ辱めを受ける。

 

まんぐり返しの体勢にされ犯されたり、正常位で犯されたり、片足だけを大きく上げさせられ犯されたり……

陽気な筈の妖精たちは、同性に犯されるという恐怖から悲鳴をあげて助けを求めていた。

その中にはランスロットと同世代の友だちも、かつてランスロットを誘惑していた妖精のお姉さんもいた。

 

性交でイかされ「使用済み」にされた後は、戦利品として門の向こうへと多数の妖精達が連れ去られていった。

妖精たちを救出しようと双成種の侵略者たちを必死に蹴散らしていくランスロットと女王ニミュエ。

彼らの前に立ちはだかったのは、光り輝く装飾を身に纏いながら、その全身から闇のオーラを醸し出している異様な女性。

軍勢を率いる双成種の主「ファティマ」であった。

 

「そこをどけ!」

 

ダッ

 

ランスロットが妖精の魔法で強化されたロングソードを握り締め、ファティマに特攻する。

女王ニミュエは背後から霧の魔法を掛け、ランスロットの姿を消す。

姿を見えないようにして一撃を与えるコンビネーション。

これによって双成種たちを斬り伏せていったのだ。

 

 

だがー

 

 

カッ

 

「うわあ?!」

 

ファティマの全身からまばゆい光が現れ、ランスロットの霧の魔法をかき消してしまう。

同時に、姿を露見したランスロット目掛けてファティマの両手から出た闇の波動が直撃する。

光属性と闇属性の相反する高等魔法を、ファティマはいとも容易く放ったのだ。

 

ドォン

 

「ランスロット!」

 

女王ニミュエの悲痛な叫びが燃え盛る城内に響き渡る。

加護の魔法で強化されていたはずのロングソードや鎧は闇の波動によって粉々に砕かれ、ランスロットも仰向けになって息も絶え絶えになっていた。

鎧の下に着込んでいたシルクの生地の衣服もズタズタにされ、ランスロットの可愛らしい両乳首が剥き出しの状態になる。

それはわざとそうなるように波動を放った悪趣味なファティマの仕業によるものであった。

 

ニミュエがランスロットに気を取られている隙に、ファティマの側近であろう口元を覆い隠したダークエルフの双成種が背後から女王を羽交い絞めにして拘束する。

魔法を唱えて逃れようともがくが、それよりも早く手を口に当てられ詠唱を封じられてしまう。

 

闇の波動をまともに受けたランスロットは起き上がることもできず、今まで感じたこともないような、全身が蠢くように疼き火照るような快感に全身を蝕まれていた。

本来であれば肉体よりも内側の骨や魔力に響く闇の波動が、双成種の特性によって内側から生じる快感へと変換されたためだ。

 

 

「フフ…」

 

クイ

 

ファティマが笑みを浮かべながら指を曲げて宙に×の字を書き、仰向けのランスロットの股間目掛けてクロス状の波動を飛ばす。

 

バシュウ

 

「あぁ!?」

 

波動はランスロットの股間に直撃し、クロス状にだけ生地が残るようにズボンとパンツが裂ける。

痛覚がかすかに入り混じったような複雑な快感がランスロットの股間に走ったかと思うと、まるでTバックを履いているかのように恥ずかしい格好にされていた。

童貞のランスロットには刺激が強かったのか、はたまた蓄積していたダメージのせいか、股間のかわいらしいペニスがむくむくと大きくなり外へとはみ出るように露出された。

 

「な、なんでおちんちんが勃って…」

 

その現象が双成種の特性のせいであるとは知る筈もないランスロットは顔を真っ赤にしてうろたえるが、体は言うことを聞かず逃げ出すことも出来ない。

ファティマがランスロットのそばまで来ると、屈んで腰回りを掴みランスロットを軽々とひっくり返した。

魔法使いとは、それも女性のとは全く思えないほどの腕力だった。

 

ファティマは手の位置をずり下げランスロットの腰骨の辺りを握ると、ぐいっと持ち上げ尻を突き出すような格好をさせる。

そのまま魔法を詠唱し、ランスロットの四肢に光の輪のようなものを出現させ強制的に開脚させる。

四つん這いで股を開いた、いつでもセックスができるような格好にさせられたのだ。

 

「は、離せぇ!」

 

女が男を誘うような恥ずかしい姿勢にさせられ、ランスロットは顔を真っ赤にしてもがく。

だが四肢を取り巻いている光の輪はびくともせず、身動きもできない。

開脚状態のためランスロットの尻だけが大きく左右に振れ、まるでファティマを誘っているようにも見える抵抗だった。

 

「フフフ…」

 

ファティマは愉悦の笑みを浮かべながら、自分の股間に触れクチュクチュと水音を立てる。

首を回して横目でファティマを見ていた初心なランスロットは、見てはならないものを見たかのように耳まで赤らめて顔を正面へと戻す。

しかしそれはファティマの女性的自慰ではなかった。

股間に魔力を込めて男性器を具現化させるための所作だ。

ファティマはふたなりペニスを具現してから獲物を犯すタイプの双成種だったのだ。

 

普段は女性の淫魔そのものだが、性行為の時はこうして具現したりあるいはクリトリスを肥大化させてふたなりペニスにするタイプの双成種は珍しくない。

元からふたなりペニスが生えているタイプより平均で見れば若干女性らしさはあるが、それでも人間の男以上に性欲は強くあることは変わりない。

 

ファティマはTバック状になったランスロットのズボンをパンツごとズラし、ピトリと具現化したふたなりペニスを蕾のような肛孔に当てる。

熱を持った「何か」を肛門に当てられランスロットは本能的に恐怖を察する。

 

が――

 

 

ズブゥ

 

 

「あ、ああぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 

 

あまりにもあっけなく、穢れを知らない無垢なランスロットの尻穴に邪悪な淫棒が挿入される。

ランスロットの脊髄を悪寒が走り、全身が総毛立つ。

 

まるで走馬灯のように、ランスロットは以前妖精族の娘に半ば無理やり読まされた本の内容を思い出していた。

どこからか見つけてきたという、美少年同士が恋し合い体を交え結ばれるという芸術の本。

 

男同士で「体を交える」という意味が当時のランスロットには全く理解できなかったが、今この時体で理解してしまった。

男根としか言いようがない脈打ち熱く硬い肉棒を、孔内に挿れられることによって。

 

出すための排泄器官に物を入れられるという行為に本来であれば嫌悪感が生じる筈だが、恐ろしいことにファティマに挿入された際の拒絶の反応は刹那の内に消えた。

代わりに発生したのは、得も知れぬ奇妙な快感。

女王の膝枕で耳かきをしてもらった時や、侍女の妖精に歯を磨いてもらった時のようなむず痒い心地よさを何倍にも強めたような快感。

尻穴を犯されているという状況にもかかわらず、ランスロットは皮の少し被った仮性包茎のペニスをむくむくといきり勃たせる。

自らを死滅させないために宿主を操り甘い毒を与え続ける寄生生物のように、ランスロットは自分の身体の内部に物を入れられる被虐の快感を味わっていた。

 

そしてその快感は、ファティマが腰を前後に動かし始めたことによって明確に表面化した。

 

ズブ ズブ ズブ

 

 

「あ、あぁぁぁぁ…、あぁ…?!」

 

ランスロットの孔壁に擦れるようにふたなりペニスが律動する。

毒入りの熟れた果実を食むような未曾有の甘い蠱惑の悦楽。

それこそはファティマの本領であり、「高等淫魔」――別名エルダーサキュバスとも呼ばれる淫魔の上級種族が持つ誘惑の能力だった。

 

ズブ ズブ ズブ

 

ファティマが繰り返しゆっくりとふたなりペニスを前後する。

反射的にアナルをきつく締め付けていたランスロットの尻穴に窮屈に食い込み、未開発の内側を掘り出して開拓していく。

ズボンを乗り越えて勃っていたペニスは下肢の血が充足するようにガチガチに硬くなってしまう。

 

「や、やめろぉ!ボクは男だ…ぞぉ…!」

「ランスロット!あぁ…そんな…なんてことを!」

 

我が子同然に寵愛していたランスロットが陵辱されているのを目の当たりにした女王ニミュエは取り乱して叫ぶ。

 

「静かにしていろ」

 

ガスッ

「ラン…!うっ…」

「じょ、女王様ぁ…」

 

ダークエルフの側近が闇の波動を込めた手刀を女王の首筋に振り下ろし、気を失わせる。

涙を流しながら必死に拒絶の意を示すランスロットだったが、四肢は拘束されファティマの力強い手で尻を掴まれている上、頼みの綱の女王は気絶――

身動き一つ取れず、ひたすらアナルを犯されるだけのなすがままだった。

 

 

「フフ…締まりの良い尻肉。匂いでわかります。童貞ですね?ボク」

「ふぁ……う、ぅぅぅ…!」

「私の名前を覚えておきなさい。私はファティマ。ボクの処女を童貞よりも先に奪った双成種の名前です」

「あぁ…!ふぁ、ファティ…マ…!」

 

 

ピストンと一緒に押し込まれるように、「敵」であるファティマの名前がランスロットの脳に強く刻み込まれる。

 

こんな醜態を晒しておきながら、何も出来ず憎むべき敵に犯されている。

ランスロットは自分の無力を呪い嘆くが、それすらもファティマの与える快楽が暴力的なまでに上書きしようとしている。

 

ランスロットの心の奥底で憎悪の炎が燃えていくが、表面では沼地のように快楽に浸る屈服の心が生まれようとしていた。

そのまま数分の間、ランスロットは女のようにファティマのピストンを受け続けた。

やがて限界が来たファティマはふたなりペニスを脈動させ、双精液をランスロットの恥穴の中に射精した。

同時にランスロットも果て、皮被りの勃起したペニスからびゅくびゅくと快楽に屈した証を吐き出した。

 

 

ドピュドピュドピュドピュ〜

 

 

ビュビュッ

 

 

バタッ

 

 

全てが終わり、ランスロットは地に伏せ涙を流しながら、生気のない目で虚空を見つめていた。

アナルの中でファティマが出した大量の双精液が泡を立てては弾けている。

熱を持ったふたなりミルクが肛内からランスロットの体内へと侵食するように染み込んでいく。

 

びくんと痙攣をすると、菊穴の内部から白い液体が水を掛けるように外へと飛び出していった。

ランスロットの心も体も汚す忌まわしき初体験であった。

 

 

「この子も連れて行きなさい」

「は」

 

 

ファティマがダークエルフの側近を呼ぶ。

側近はランスロットに近づき、荷を抱えるような姿勢で膝を下ろそうとする。

攫われていった妖精族と同じように、ランスロットもまた戦利品として持ち帰るために…

 

 

「そうは…させないわ」

 

 

かすかに意識を取り戻した女王ニミュエが渾身の力を振り絞り、隙を突いて伏せるランスロットに魔法を放つ。

ランスロットを囲むように魔方陣が出現し、慈悲深い青白い光に包み込まれていく。

 

 

シュワー

 

 

「む…転移魔法か」

 

ダークエルフの側近がランスロットに伸ばしかけた手を止めボソリとつぶやく。

転移魔法の作動中に下手に触れると大事故に繋がりかねないためだ。

 

 

「ニ、ニミュエ…さま…」

 

 

転移魔法が発動し、ランスロットは何処かへと消えていった。

 

 

意識も朦朧としていたランスロットが最後に見たもの。

それは、せめて彼を救うことだけでもできたニミュエの慈悲深い笑みだった。

 

 

回想の続きを見る。

 

前の選択肢に戻る。

 

タイトル画面に戻る。