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ザッザッ

 

ランスロットは片膝を着いたヴァルゴに向かって歩き出し、とどめを刺そうと剣をかざす。

 

 

絶体絶命のピンチに陥ったヴァルゴは、一か八か奥の手でランスロットに一矢報いようと企てていた。

 

 

ランスロットとヴァルゴとのレベル差は確実なものであったが、ヴァルゴとて一流の冒険者を凌ぐ強力な淫魔である。

彼女には雪原に棲む強力なビースト族の雷属性モンスター「サンダーウルフ」の血が混じっていた。

サンダーウルフは俊敏な動きで敵に噛み付き、全身から放電して動きを封じるという狩りを行う。

その習性が本能としてヴァルゴには残っており、そしてレベル30を超えた頃彼女はある必殺技を習得していた。

 

その技は「スピードアップ」。

元々俊敏なスピードタイプである彼女の速度を、数秒だけだが更に数倍に上げる技だ。

この奥の手で、この人間にしがみついて体中から放電攻撃を行ってやる。

ヴァルゴはそう考えながら、ランスロットが迂闊に近づくのを待った。

 

そして――

 

ヒュンッ

 

(一瞬で決めてヤるぜ!くたばりやがレェ!)

 

音速にも迫るスピードでヴァルゴがランスロットに突進する。

それはまさに刹那の間にランスロットのふところに潜り込み、決死の電撃攻撃をランスロットに見舞うものに思えた。

 

 

 

だが――

 

 

 

ズバァ

 

 

「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

音速の速さで迫るヴァルゴを、それよりも速くランスロットの巨剣が両断する!

体を斜めに切り裂かれ、一撃でヴァルゴは白目を向いて失神する。

これが双成種の戦いでなければ間違いなくヴァルゴは即死していただろう。

 

ランスロットはヴァルゴに近づく際も、少しの隙も見せずに戦いの気を高めていたのだ。

戦闘意欲に満ちた伝説の英雄級の強さを持つランスロットの間合いに入れば、いかに音速の速さを出したヴァルゴでさえひとたまりもなかった。

 

 

ヴァルゴの野生の臭いが充満する愛液が飛び散った剣を振り払い、ランスロットは鞘に戻す。

地面に伏せ激しく痙攣しているヴァルゴとその仲間たちを一瞥し勝利を確信した後、ランスロットは広間の中央で縛られていた冒険者二人のもとへ行く。

 

「無事か、お前たち」

 

冒険者たちが正気を保っているか確認するため、ランスロットは二人に呼び掛ける。

しかし―

 

「あぁ…もっとぉ…もっと犯してぇ……♥」

「チンポ…ふたなりチンポ挿れてくれぇ……♥」

 

二人ともランスロットの存在すら認識できていないのか、変声した高い声でうわ言のように更なる陵辱を求めていた。

双成種のふたなりペニスで犯され続け、快楽によって自我が崩壊してしまったのだろう。

 

淫魔に犯された人間が性的な中毒症状を起こすことは珍しくないが、双成種に犯された場合はより質(たち)が悪い。

ほとんどの場合双精液を体内に出され、腸内から吸収して人体に多大な影響を及ぼす。

女性であれば淫魔化を起こし、同じ双成種と化してふたなりペニスが生えてくる。

男性であれば喉仏がなくなり、声が中性的あるいは女性的に変声する。

 

そして両性に共通してふたなりペニスが強烈に恋しくなり、欲情するようになるのだ。

 

こうなってしまっては、人間界に連れ帰ってもまともな人生を送ることは出来ない。

例え帰ったとしてもまたすぐに自ら淫界に犯されに行くか、もしくは発狂死を迎えることだろう。

 

 

「…救出は無理か」

 

ランスロットは二人を助けることを断念した。

今気を失っている双成種が目覚めれば、この二人はまたふたなり淫魔の性の捌け口として一生涯犯され続ける人生を送るだろう。

それでも本人たちにとってもはやそれが幸せだろうと判断し、ランスロットは迷宮の地下へと進み始めた。

 

 

「…待っていろ、ファティマ」

 

誰に聞こえるでもなく、ポツリとランスロットは呟いた。

彼の迷宮に来た目的はただ一つ。

 

 

それは「復讐」だった。

 

 

迷宮の奥へと進む。

 

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