ついに光悦はさらに腰を進めた。ずぶり。そんな音が部屋に響いた気がした。やわらかい泥の中に沈み込むような感覚が伝わる。処女とはいえ、あれほど絶頂を何度も重ね濡れていれば、中は十分すぎるほどの潤滑があった。
「いぎぃっ!?」
だが菫子にとってはそうではない。未踏地に、大きすぎるものが侵入したのだ。体がこわばり、声が出るのも当然のことだろう。これ以上広がるはずがない、そんな狭い穴を、固く大きい肉の凶器が少しひいては押し広げるように侵入しようと掘削を試みている。先ほどまでの子宮の疼きなど嘘のように消えてしまった。痛い、とにかく痛いのだ。脂汗が全身から吹き出てくるのを感じる。先ほどまで霞がかかったように動かなかった頭が強制的に覚醒させられる。
だが、光悦は止める気など全くないようだ。菫子の耳にはギチギチという自分の肉壺の立てる不吉な音が聞こえた気がした。裂けてしまいそうな痛みと恐怖。怯えが思考を支配していく。
光悦は菫子の肩を抱くと更に力強く肉杭を押し入れた。
「あっ、がぁぁっ!」
喉が裂けるほどの声。さきほどの甘い艶っぽさのある声とは大違いだ。
裂ける。菫子がいま感じている感覚はまさに引き裂かれるほどの痛みだった。メリメリという音すら固く閉じた肉壺がこじ開けられる音すら聞こえた気がする。
光悦は狂ったように暴れる菫子の腰を片手で押さえ、もう片方の手ですらりと伸びた菫子の太ももを抱え込むと熟練の坑夫が固い岩盤を扱うように、体重をかけたピストンで掘り進めていく。菫子の目は痛みに大きく見開かれ、食いしばられた歯の隙間からは獣のような悲鳴が漏れる。なんとか逃れまいと体をバタつかせるが、光悦の体重が乗せられた下半身はビクともしない。それでも無駄と知りながら暴れるその姿はまな板の上にある魚が、熟練の料理人の屈強な腕で押さえつけられ、客の舌を楽しませる新鮮な料理へと変わっていく姿によく似ていた。
光悦は菫子の腰を浮かせた状態で抱え込んでいる。雌壺を上向きに向かせるためだ。光悦は腰を引き、再び体重をかけて腰を下ろす。キツい穴に体重による威力の乗った肉杭が打ち下ろされる。すでに掘り進められた肉の坑道は征服者の暴力的な侵入の前に再び道を開き、光悦の肉棒にギチギチとした締めつけを与えている。菫子にも、体内に鈍い痛みが走り始めることでそれを理解できた。だがこれは前奏にすぎない。本当の痛みはこれから来るのだ。
やがて剛直はいまだ穴の押し開かれていない場所につく。いまだ光悦のモノを迎え入れていない閉じきった穴。剛棒の先端部には痛いほどの圧力を感じる。光悦はそこでぐりぐりと体重をかけた動きで穴を掘削していく。すこし腰を引き、再び入れる。ズンという音が聞こえるほどの小さいが重い動きによって衝撃が加わり、肉の穴がわずかに緩む。その緩みを広げるようにふたたびグリグリとドリルのような掘削。文字通り、肉を掘り進んでいるのだ。そこから生まれる激痛は生半可なものではない。菫子は狂ったように暴れながら激痛から逃れようとする。もちろん光悦に押さえつけられた状態では逃れることはできはしない。その姿に光悦のモノがさらに固く大きくなる。嗜虐心を刺激されているのだ。
これが菫子が愛した男と、お互いの愛を確かめるために行う行為であれば労わりや手加減といったものもあっただろう。しかしこの行為はそんなものではない。光悦が、菫子を暴力的なまでの行為で屈服させ、雌とは男に支配される穴にすぎないということを体で理解させるための行為なのだ。手心など加えられるはずがなかった。
菫子はせめて自由になる頭を大きく振る。事情を知らない余人が見れば精神に異常を覚えているようにすら見えただろう。いや実際に狂っていたのだ。少女の肉体には耐え難いほどの痛みが襲いかかっている。それでも光悦の責めは緩みはしない。まだ肉棒は半分ほどしか菫子の中に埋まっていないのだ。それはすなわちこの地獄が、まだ半分しか終わっていないことを示していた。
「痛いなら力を抜かないと裂けてしまいますよ?」
光悦は口元に薄笑いを浮かべながら言うが、痛みに意識を塗りつぶされた菫子はそれどころではない。

光悦は痛みに意識を塗りつぶされ、ただ痛みにのたうつ菫子の反応を楽しむように肉杭で菫子の中を掘り進めた。痛みを刺激するように中で円を描くように動かせば菫子は歯を食いしばり痛みに涙を流した。体重をかけて中を掘り進めれば、身を裂かんばかりの痛みに菫子は無防備に喉を晒し、逃れようとせめて自由になる首を左右に振った。それはまな板の上で新鮮な魚が包丁で捌かれる寸前に見せる抵抗に似ていた。光悦は、熟練の料理人のようにしっかりと押さえつけ、力を込めた肉棒をもって菫子の抵抗と理性を解体し、味わえる形へと整えていく。

「もっ、もお゛っ、ゆるじでっ……」
菫子の口からは許しを乞う言葉がこぼれた。菫子はついに言ってしまった。あれほど卑劣な男に屈しないと気丈に睨みつけ、虚勢を張り続けた菫子が、ついに折れたのだ。暴力によって壊され、あまりにも強すぎる法外な痛みに支配された思考と度を超えた恐怖に怯えた、単なる少女にすぎない菫子にとってはそれは仕方のないことであった。
光悦はその言葉を聞いてか聞かずか、腰をさらに引き、ズン、と重力と体重の力を借りて剛直を振りおろした。
「あがぁぁぁっ、おぉぉ゛っ!」
菫子は無防備に白い喉を晒しながら呻いた。さらに光悦はもう一度腰を引き、さらに強くズンと落とし、すりこぎを使うように菫子の血まみれの肉壺をすり鉢に見立て、肉棒でゴリゴリと擦りたてる。
「あっ、がっ、あああっ!」
反射的に高くあげた白い脚が不自然に電流を浴びせられたようにビクビクと震える。すりこぎ。まさにそうだろう。あれほど強く、あれほど自信に満ちていた菫子の精神は暴力的なまでの行為によって、すり鉢の底で砕かれ粉にされるように粉々に砕かれてしまった。いまここにいるのは、男に組み敷かれ、男の暴力的なまでの行為に何もすることができず、ただ哀願をするまでに落ちてしまった哀れな少女にすぎない。
そして、光悦の動きが止まった。菫子は荒い息を吐きながら思う。自分の哀願を聞きい入れてくれたのだろうか。あれほどの荒々しい行為は自分の精神を屈服させ踏み砕くための行為であり、自分が敗北を認めてしまえば、それで多少の手心を加えてくれるのではないだろうか。認めたからか?自分が敗北を認めたからだろうか。もっと早く屈服していれば、より苦しまずに済んだのだろうか。そのような考えが頭をよぎる。
もちろんそんなはずはなかった。処女地の蹂躙者が一番奥にようやくたどりついたのだ。光悦はこれからの蹂躙に備え、きつい洞窟を剛直の形になじませようと動きを止めているにすぎない。単なる休憩ではない。動くことだけが蹂躙なのではないのだ。肉棒を咥え込み押し広げられた状態でなじませることで、蜜壺を光悦を受け入れた状態を当然のものと捉えるよう変質させることもこの男にとっては調教の一部なのだ。
しかしそれを知らぬ菫子には不気味な小康としか捉えられない。屈服の言葉を吐いたことでこの小康状態が訪れたのではないかという思いが頭の中でグルグルと回る。従順さを装えばこの地獄のような痛みは和らぐのではないだろうか。そう装うことで、今はこの場をやり過ごそう。そんな悪魔の囁きが聞こえる。しかしそれを認めれば、菫子の高潔な精神はこの卑劣漢に媚びへつらうことを認めてしまうことになる。何度振り払っても、腹部からズキズキと湧き上がってくる耐え難い痛みと圧迫感はこの男に偽りの屈服を見せてしまおうという悪魔の囁きを再び生み出してくる。それは自分が痛みに屈し、この男に許しを懇願したという屈辱の体験を菫子の中で反芻させていた。

「少しは痛みは治まりましたか?」
しばらくの不気味な沈黙ののちにようやく光悦が口を開く。その口調はまるで菫子のことを気遣っているようだった。もちろんそんなはずはない。菫子を屈辱と痛みにのたうち回らせたのはこの男なのだから。
「ふざけないでよ………」
菫子は減らず口を叩くが、その声に先ほどの勢いはなかった。暴力と痛みと恐怖によって萎えてしまった精神に先ほどまでの威勢を取り戻せというのは無理な話であろう。菫子の屈服体験の反芻もそれに手を貸していた。なにより菫子にとって不愉快なのは、実際に痛みが治まりつつあるということだ。
五感のすべてを埋め尽くしていた痛みが引いたということは、別の感覚を感じさせられるということだ。つまり、快楽。

「大丈夫ですよ、これからは痛くなりませんから」
光悦は再び腰を動かし始めた。先ほどとは違い、とてもゆっくりと、優しい動き。中の快楽器官を目覚めさせるような動きで。
菫子にとっては激しい痛みを伴う激しい動きから、嫌悪感を伴う比較的遅い動きに変わっただけにすぎない。痛みすらまだ完全になくなったわけではないのだ。光悦が動くたびにズキズキとした痛みが依然として神経の中を走り抜ける。痛いだけ。それだけだった。そのはずだった。
しかし。時間が経つにつれてそれは変わり始めた。菫子にのしかかった光悦がゆっくりと動き、膣の形をたしかめるように、そぉっとカリが舐め上げるように膣襞を擦り上げていく。すると、ぞわぞわとした感覚が湧き上がってくるのを菫子は感じた気がした。いやその表現は正しくない。ついに無視できなくなり認めざるを得なくなったのだ。
「(どうして、こんなに)」
菫子は自問する。しかし前戯ですら自分を乱れ狂わせたのがこの男だ。この男の技巧をもってすれば、おそらくこの男には難しいことではないのだろう。光悦が抽迭するたびに、痛みとぞわぞわの比率は変わっていく。どちらが減り、どちらが増えていくのかは言うまでもない。ぞわぞわ、もはやそんなおためごかしの言い方ではすみはしない。快楽。雌が雄に組み敷かれ、ペニスで犯されながら感じるセックスの快楽。それを菫子は徐々に感じ始めていた。
すでに自慰行為によってある程度開発されていた胸やクリトリスと違い、膣内は始めて男を迎え入れた場所だ。未知の異邦人を迎え入れる場所を、光悦の剛直は優しくなでさするように出入りする。膣襞の一つ一つをカリ部分で器用に撫でるようにして官能を掘り起こし、感じる場所を探すように、優しく丁寧な動きだ。