「そこの貴方(あなた)」
背後から声がした。
貴婦人のような凛とした呼びかけである。
いや、この比喩は不適切かもしれない。
――その声の主は子どもだったからだ。
朝の駅。
サラリーマンや学生さんたちが早足で通り過ぎていく。
ボクは流れに逆らい足を止めた。
一瞬迷ったあげく、振り向く。
知らない小さな女の子がいた。冷たい目でまっすぐにボクを見ている。
青のワンピースが印象的だ。ずいぶんひらひらが多い。ドレスと言って差し支えないようなデザインである。
もちろん、そんな格好は、灰色のスーツ、紺の制服ばかりの駅ではとても目立った。ボクにも奇異の目が向けられる。……恥ずかしくてすぐにも逃げ出したくなってきた。それに、急がないといつもの電車に乗り遅れる。
「ついてきなさい」
でも、ボクはその女の子に従った。
躊躇なく、青い小さな背中を追う。
いつもと違う階段から、いつもと違うホームに入った。
いつもと違う電車に乗り、いつもと違う方向へ行く。
電車の窓の外に知らない景色が流れる。
ボクはどんどん日常から離れていく。
迷いはなかった。
以前も似たような経験があったのだ。
あの時も突然ボクは非日常的な女の子に声をかけられ、非日常的な世界に踏み込んだ……
「ここ」
一時間後。
唐突に青い女の子は電車を降りる。
黙ってボクはついていく。
駅を出て歩き始める。
知らない街だった。
制服姿の女の子たちがたくさん歩いている。白いセーラー服の群れだ。近くに女子校でもあるのだろう。校則の厳しい学校らしく、みな制服を着崩さず、きちんと青のリボンを胸に結んでいる。
足下は一様に紺のハイソックス。きっちり膝の下まで上げている。きれいなふくらはぎの形がよくわかる。膝から紺のスカートまでの白い太ももがまぶしい。
心なしかこの生徒さんたちは全員が「お高く止まっている」ように見えた。典型的な生意気女子校生というか……。よほど受験偏差値が高いか、お金持ちの集まる学校なのかもしれない。
白いセーラー服の海を割って、青いワンピースの彼女はどんどん進んでいく。
当然、まわりの女の子たちの視線が集まる。その目は後ろのボクに流れる。視線が冷たいように見えるのは気のせいではないだろう。……だんだんと耐えられなくなってきた。そもそも白いセーラー服の女の子に囲まれてるだけで相当に恥ずかしいのである。
道の先に高い壁が見えてくる。
学校の校門だ。
『華友女子学園』。そう書かれている。
セーラー服が次々に吸い込まれていく。みんなここの生徒さんたちだったようだ。
「貴方はここで待ってなさい」
女の子が突然振り返った。
一人、学校の中に入っていく。
その背中を見送る。ボクは校門の手前で待つしかなかった。
彼女に従わなければ……多分殺される。そこまでいかなくともひどい目にあうことだろう。
じろりじろりと登校してきた女子生徒たちに見られる。
ボクはできるだけ隅っこの方に隠れ、青い子が戻ってくるのはまだかと校門を眺める。
学校の敷地に入ってすぐのところに、すらりとした美人の女子生徒が立っていた。
「おはようございます」
と、生徒たちにあいさつを投げかける。
真っ黒なセミロングヘア。真面目そうな雰囲気。
この学校の風紀委員だろうか? 登校する生徒の服装をいちいちチェックしている節がある。
だが、彼女にはそれ以上の風格というか、余裕や威厳が感じられた。
となると……生徒会長?
「おはようございます、生徒会長」
生徒の挨拶がボクの疑問を解消してくれた。
華友学園とやらでは美人が生徒会長を務めているらしい。
観察していると、その目がボクを向いた。
刀で斬りつけられたかのように戦慄が走る。
何の価値もない生ゴミや虫けらを見る目だった。
「おっはよー」
背後から脳天気な声が響き、ボクの恐怖を切り裂いた。
「ぎゃっ!」
声の主に突き飛ばされた。
固い地面に打ち付けられる。
「いった〜〜〜〜〜い。何なのよこいつ!」
ぶつかってきた相手は、被害者であるはずのボクをなじった。
痛いのはこっちである。後ろからぶつかられて受け身を取れなかった。手をすりむいてしまった。
倒れたまま加害者を見上げる。
にらむ目とぶつかる。
ギャルとはいかないが、ちょっと軽そうな子だった。ふたつに結んだ髪の毛が茶色がかっている。この学校は染めるのが禁止されているようなので、これが地毛なのかもしれない。
「こいつキモいんだけど……。ちょっと、亜由美、何で男がいるのよ!」
亜由美が来た。
例のボクをにらんだ生徒会長であった。
「さあね。どなたかしら。教師なはずはないし、父兄にも見えないし」
黒髪の生徒会長がボクを見おろす。見くだす。視線だけで殺されそうだ。すごく怖い。
「これ、変質者でしょ。顔が変質者だもん」
否定はしにくかった。朝っぱらから女子校の前に男がいたら、ほぼ間違いなく性犯罪者かその予備軍に違いない。
「死ねっ!」
唐突に、茶髪っぽい子がボクを蹴った。
「ぐっ!?」
脇腹に入る。
が、ダメージはそれほどない。つま先に体重が乗ってない。
さらに重要なことに、蹴った瞬間パンツが見えた。水色だった。
黒い塊がボクの心の奥底からしみ出てくる。
この数ヶ月忘れていた感覚……。
「こいつ、パンツ見てる! 変態だよ!!」
「そうみたいね」
下から生徒会長のパンツも見えた。
純白である。それもレースが多用され、高級そうな下着だった。
健康的な太ももが動く。
足を蹴られた。
「ひゃっ!?」
つま先に体重が乗っている。固い皮が筋肉にめりこむ。
涙目になったボクは身を縮め、横に転がる。怪しいのは事実だけど、まさかこんな暴行を受けるなんて……
「なに、痴漢?」
「変態?」
女の子たちが集まってきた。
ボクはセーラー服の女子校生に敵意の目で見下ろされる。
明らかにボクを殺そうとしている。気のせいじゃない。校門の前にいただけなのに、ちょっとエスカレートしすぎだ。
「もしかしたら、ただの変態じゃないかもしれないわ」
亜由美さんが言う。
「ひょっとして……化け物?」
「そう、クリーチャーかもしれない」
クリーチャーなる単語が出たとたん、女の子たちの殺気が……さらに危険なものに変わった。
『殺してもいい変態』から『殺すべき敵』にボクが変わったのだ。
「ボ、ボクは変態でもクリーチャーでもないよ」
泣きながら叫ぶ。
「白々しい」
憎々しげな生徒会長の眼光。
困ったことに――彼女の勘は当たっていた。ボクは普通の人間であるが、おそらく、彼女らが呼ぶところの『クリーチャー』でもあったのだ。
「死ねっ!!」
三人から踏まれた。
革靴の固い底が身体に食い込む。
「いたっ!! やめてっ!!!」
懇願して叫ぶ。
「殺せ!」
「殺せ!!」
若い女の子たちの歓声。憎悪と高揚の大合唱だ。
「変態でもクリーチャーでもどっちでもいいわ。潰しましょう」
亜由美さんが冷たい声で言い放つ。
「潰すって……」
何を潰すのか、誰も答えてくれなかった。
だが、靴のつま先が答えを示している。
ボクの股間に向いている。
ズボンとパンツの上から、靴底がボクの男性器に触れる。
「やめて!」
体重が少しずつかかってくる。
「やめてっ!!!」
力一杯叫んだ。
生徒会長は動きを止めた。
「!?」
ボクは慌ててつま先の下から逃げだした。
潰されずに済んだ股間をそっとなでる。
「おまえ、なに逃げてるんだよ」
別の子に今度は背中を蹴られる。
転がったボクを踏もうとし、
「やめてっ!」
足を上げたまま、その子は止まった。
「??」
またもこれだ。
たった今までボクを殺そうとしていたのに、突然ボクの言うことをロボットのように聞いた。
「み、みんな離れて」
泣きながらぐるりと見渡す。
セーラー服の女の子たちは一歩下がり、二歩下がり……ボクから遠ざかっていく。
だが、そのきつい目々は憎々しげにボクをにらむ。
「どういうことだろう……」
と、女の子の円が割れた。
人の群を割って出てきたのは、青いワンピースの少女であった。
手に大きなガラス球のようなものを持っている。
「それ……」
見覚えがあった。
「奪ってきました。ここの学園長から」
それは確か、何とかジュエルとか言ったはずだ。女の子にしか使えない不思議な力の源。この世に何百個もあって、奪い合いが行われているという。
数ヶ月前、ボクはその抗争に巻き込まれていた。
「この学校は魔女を育てる学校なのです。生徒たちはみな魔女候補生」
「魔女……?」
ボクを取り巻く生徒たちをちらっと見る。
「魔女です。つまり、私の敵」
断固とした一言に緊張が駆けめぐる。
「この生徒たちが、いつ私を殺しに、このパワージュエルを奪いに来るものか……」
女の子は大きめの宝石を眺め、ボクに視線を戻した。
「貴方は今日からこの学校の教師、学園長です」
「教師? 学園長?」
「ええ、他の教師は処分しました」
「……」
どのように処分したのかは考えたくなかった。『パワージュエル』を使えば種類によって何でもできる。とにかく、この学校の教師たちはいなくなったのだろう。
「この生徒たちは教師である貴方の命令なら何でも聞きます。そういう魔法をかけました。『強制』です」
懐から別の宝石を取り出す。
「貴方は生徒たちの魔女たる資格を奪いなさい」
「資格を奪う……!?」
ボクはつぶやく。
話を聞いていた女子生徒たちが不安げにざわめき、さらに一歩後ずさる。
「そうです。処女を奪うのです」
この学園の生徒たちは魔女だという。
ボクの知る限り、魔法の石を使えるのは処女だけである……
「処女を奪い、念のため何度も犯しなさい。妊娠するまで何度も何度も。そうすれば確実に魔法の力を失う。貴方にならできるはずです」
それで話は終わりのようだった。
青いワンピースの女の子は、軽く目を閉じ、歩き始めた。またもや、セーラー服の人垣が割れる。
ボクは見えなくなるまでその背中を見送った。
振り返ることもなく、彼女は去っていった。
ボクが教師……?
「ボクが学園長だって? ボクの命令を何でも聞く……?」
生徒たちも信じられないようだ。互いに顔をあわせ、ざわめいている。
「しっ、静かに」
ボクが口にすると、ぴたりと私語が収まった。
どうやら――
本当にボクの命令に従うようだ。
といっても、従順になったり、洗脳されているわけではない。いやいや命令を聞いている。ボクへの敵意の目が痛い。いたたまれない。
「怖いから……目を閉じて!」
そう、お願いする。
すぐに全員のまぶたが閉じる。
ボクはほころんだ。
人に言うことを聞かせるのは意外と気分がよかった。それも命じる相手は、さっきまでボクを殺そうとしていた女の子連中である。罪悪感は薄い。
さてどうしたものか。
目をつぶった女の子たちを眺める。
自然と胸や腰、足に視線がいく。
本能の奥底から黒い力が呼び起こされる。
彼女たちは、全員、ボクの言うことを聞く。
そして、青いワンピースの子から命令されていた。全員の処女を奪え、と。
衝動に襲われる。
処女が欲しい。
全員の処女を奪いたい。
普通の男には大変な作業だろう。どれだけ性欲が強くても数百人の女の子たちとセックスするのは骨に違いない。
でも、『クリーチャー』であるボクにはその力があった。
「みんな目を開けて。これから命令を与える」
黒い瞳が一斉にボクを向いた。
そのうちの半分はボクをにらんでいる。でも、残りは何を言われるのか怯えているようだ。
「えーと」
咳払いする。
「まず、みんな学校に入ろうか」
校門外での騒ぎは目立ってしまう。
▽
朝は全校集会であるらしかった。
体育館に白い制服姿の少女たちが列を作りきれいに並んでいる。
ピアノの旋律にあわせ、校歌を歌う。
ボクはそれを壇上にもうけられた席から見下ろしていた。
今、この体育館には、何人くらいの女の子たちがいるんだろうか?
一、二、三……、横の列を指で数える。
……十、十一、十二。合計十二列だ。合計十二クラスあるということだろうか。一クラスあたり何人いるかまではとても数え切れない。
校歌斉唱が終わった。
生徒会長の亜由美さんが壇上に上がってくる。
「学園長のあいさつです」
と、ボクを嫌そうな目で見る。
「え? ボク?」
マイクの前に引っ張り出される。
「え、えーと……」
スピーカーから流れる音が一瞬、ハウリングする。
何を言えばいいんだろう。まるで思いつかない。
生徒たちがボクを見上げていた。
不安な目、敵意の目、死んだような目。
彼女たちはボクの生徒であった。
「ボ、ボクが、みなさんの学園長……だそうです」
恥ずかしくて小さな声しか出ない。それが増幅され、体育館中に響き渡った。
ボクは学園長だ。どんな命令でも彼女たちは聞く……
「えっと、みなさんの……その処女を奪うように言われました」
出来るだけ言葉を選ぼうとしてストレートな表現が口を出た。
みんなが一斉に引いた。
まわりの子たちと視線を交わし合う。
ここにいる女子生徒たちは全員処女である。
むりやり犯したりしたら可哀想だ。できればそんなことはしたくなかった。
合意の上ならば、ぜひともしたいけど、性交したら魔法を使えなくなるのだから、絶対合意するはずがない。そうでなくとも、プライドの高そうな彼女たちが、ボクみたいな男を受け入れるはずがない。
でも。
「みなさんを妊娠するまで徹底的に犯すようにと……言われました」
少しずつ身体が熱くなってきていた。
異変に気付いたのだろう。
生徒たちがざわめき始める。
奥底からわきあがるものがある。
欲望である。
ボクはボクであってボクでなかった。
この全員を徹底的に犯してやりたい。
泣いても騒いでも陵辱し尽くしたい。
何ヶ月もの間、眠っていた力が形となって現れた。
悲鳴。
生徒たちが目を見開き、あるいはそむける。
触手である。
人の腕ほどもあるそれは、どこからともなく現れ、ステージの上でさざめいている。
次の触手が現れる。
ボクの左右で数本の触手が乱れる。
信じられない光景に、女子生徒たちは、息をのみ、互いに身体を支え合った。
一番近くにいた亜由美さんは、二、三歩、後ずさる。
この気味が悪い触手は、ボクの身体の一部であった。手が形を変えたものであったり足の延長であったりする。
そして……
次の触手が出てくる。
これは――ボクの男性器だ。恥ずかしながら先端部に皮がかぶっているので、はっきりとはわかりにくいはずだ。
触手が女の子たちの方に伸びる。
「ご、ごめん、もう我慢できないんだ……」
ボクは思い出す。何ヶ月か前にもこんなことがあった。
妙な力で触手の化け物にされてしまったボクは、わき上がってくる黒い欲望に負けて、五人の女の子を犯し、処女を奪ってしまった。
その後、あれほど溢れていた性欲はどこかに消え失せていった。まるで一生分の精液を出し尽くしてしまったかのように。
だが、今。
目の前の女の子たちを犯したい。
おさえつけて、貫いて、中に出したい。
理性で抑えられるような欲望じゃなかった。何か大きなものが完全にボクを支配している。
「本当にごめん……」
触手を伸ばす。
最前列の一人に狙いを定める。
ボクの意志に気付いたようだ。
その背が低い子は恐怖で顔を歪ませた。
「ま、待ちなさい!」
誰かがボクの触手をつかんだ。
生徒会長の亜由美さんだ。
「そんなことは許さないわよ!」
「許さないって言われても……」
彼女は無力だった。ボクは触手の力で押さえつけることができる。口頭で命令することもできる。
でも、無理矢理、生徒を犯すのに乗り気でないのも事実だ。
「亜由美さんがあの子の身替わりになってくれる?」
「それはちょっと……」
顔をひきつらせる亜由美さん。
ボクは衝動に突き動かされている。とにかく欲望を満たさないと収まらない。
「じゃあ、口でしてよ」
「く、くち!?」
「うん、それなら処女も守れるし……いいでしょ」
あまり良くはなさそうだった。
うろたえてまた後ずさる。
「してくれないと犯しちゃうよ」
手の触手で足をつかむ。
「いやあっ!」
亜由美さんはすごい悲鳴を上げた。
「どうするの」
別の触手をスカートの下に潜り込ませる。
生徒会長の白パンツがはっきり見えた。触手というのは妙なもので、視覚までついてくるのだ。
「わ、わかったわよ!!」
半泣きで亜由美さんは叫んだ。
「よーし」
ボクは彼女の鼻先に触手の一本を突きつけた。
忌まわしげに顔をそむける亜由美さん。
「これは舌なんだ」
舌型の触手である。
ボクは三種類の触手を持っていた。手足型、舌型、男性器型だ。
「まずこれから」
舌型触手でぺろりと亜由美さんの下唇をなめる。
甘い。
相手は嫌そうに顔をそらす。
「だめだよ、ちゃんと受け入れて。ボクの舌を」
命令が効果を発揮した。
緩む口元。
触手を中に突っ込む。
ぎゅっと目をつぶる亜由美さん。
ぬるぬると侵入する。
「んっ!」
生暖かく湿った口内。
舌を発見し、絡み合わせる。
べちょりっ、べちょっ、べちょ
生々しい唾液の絡む音。
ディープキスである。普通なら絶対ボクを相手にしないような美人とキスできるなんて最高だ。
同時に手の触手をスカートに突っ込み、パンツの上からお尻をなでる。深い割れ目にそって先端を動かし、それからぐるりと大きく回して全体の弾力を楽しむ。
「!」
亜由美さんは手で払いのけようとする。
「さわるだけだから……」
触手で両手を抑え、背中に回す。
振りほどこうと暴れて膝が落ちる。
亜由美さんは倒れそうになった。
「おっと」
間一髪、腰をつかんで支えてやる。
生徒会長は立て膝の形になった。
「んふっ……!!」
頭と首を振って、ボクから逃れようとする。
舌を引き抜いた。
「んっはっ」
亜由美さんはよだれを垂らした。
拭こうにも手はボクがふさいでいる。
キッとボクをにらむ。
相当に気が強いし、屈しない。先ほどボクを殺そうとしただけはある。
「よし、じゃあ次が本番だよ」
男根型触手を出す。
先端部がぺろんとむける。
亀頭はすでに真っ赤に充血していた。
舞台下の生徒たちから恐ろしげな悲鳴が届いた。あたかも自らがナイフを突きつけられたかのように騒ぎ始める。
亜由美さんは歯を食いしばりながら横を向く。
「ほら、口を開けて」
別の触手でアゴを押さえる。
命令が効いたのか、観念したのか、嫌々ながらも口が開いた。
触手チンチンを近づける。先端から透明の我慢汁が垂れている。
「なめて」
顔が歪む。おずおずと赤く濡れた舌が出てくる。
先っぽに触れる。
「……!」
ボクはあまりの刺激に身体を振るわせた。
唾液で光る舌がゆっくり上下する。
一番敏感な部分をやや乱暴にいじられる。
気持ちいいなんてものじゃない。直接、性のスイッチに触れられているようなものだ。
「う……」
全神経が触手の先っぽに集中する。
どんどん高まっていく。
ここ数ヶ月のボクは、セックスはもちろんオナニーすらしてなかった。
それがいきなり、こんな可愛い子(それも処女)に、こんなことをされたら……。
耐えきれない。数ヶ月溜め込んだものが暴発してしまいそうだ。
「しゃ、しゃぶって」
堪えて何とかそう命令する。
「……」
上目遣いに反抗的な目。
ちゅぷりっ
亜由美さんは黙ってボクをくわえた。生暖かくてぬめったものに包まれる。
「動いて……」
ちゅぷっちゅぷっ
後ろ手に拘束されたまま、亜由美さんの口が動き始めた。上半身のみの力で前後する。
稚拙な動きだが、唇や舌に亀頭の粘膜が刺激される。
ちゅぷっちゅぷっちゅぷっちゅぷっ
「あっ……いいよ!」
思わず触手で頭を抑える。
この気持ちよさは天国だった。
優しく、ぬるぬるした動きで、ボクは導かれる。
下の方からすすり泣きが聞こえてきた。見守っていたギャラリーが泣き始めたようだ。
「あ、亜由美さん。も、もう、出そう。全部飲んでね。吐き出したりしたら……」
お尻の割れ目をなでる。
びくんと身体が動く。
「動きを速くして……!」
じゅぷっじゅぷっじゅぷっ
亜由美さんの唇がグラインドする。
これはたまらない。
じゅぷっじゅぷっじゅぷっじゅぷっじゅぷっ
先端が熱くなる。
身体に力が入る。
高まったものがさらに上へ。絶頂へ。
じゅぷっじゅぷっじゅぷっじゅぷっじゅぷっ
耐えきれず爆発する。
「……!」
ボクは数ヶ月ぶりに達した。
どびゅびゅびゅびゅびゅびゅっ!!!
すさまじい勢いで精子を飛ばす。
びゅくくくくくっ!!
長い尿道を駆け上り、先端から吐き出される。
身体がぶるぶる震える。
勢いが止まらない。
びゅくっ! びゅくびゅくびゅくっ!!
遠慮無く何度も射精しまくる。
ただでさえ気持ちいいのに、触手のチンチンは尿道が長い。その分だけ快感を味わえる。
びゅびゅびゅびゅっ
波が後から後から押し寄せる。
初めてフェラチオした子には酷な精液の量である。亜由美さんは出した分だけ、次から次へと一生懸命飲んでいるようだ。
ぴゅっぴゅっぴゅっ
ボクは絞り出すように射精を続ける。
ぴゅっ……ぴゅっ
やっとのことで勢いが衰えはじめる。
ぴゅっ……ぴゅっ……
波の間隔が長くなり、
ぴゅっ……ぴっ……ぴ……
そして止まる。
ぴっ
かろうじて最後の一滴を喉に浴びせる。
ちゅぷっちゅぷっちゅぷっ
終わっても亜由美さんに唇でしごかせる。
「もう少し、ゆっくり……」
ちゅぷっ……ちゅぷっ……ちゅぷっ……
軽い奉仕で余韻を存分に楽しむ。
ボクは陶酔の中にいた。頭がとろけてしまいそうだった。
しばらくそうした後でつかんだ頭を離してやる。
「こ、これでいいでしょ」
亜由美さんの唇と舌に飲みきれなかった精子がべっとりついている。ステージの上に糸を引いて垂らす。
目尻には涙。それでも気丈さを失わない。
「うん、よかったよ……」
最高の射精だった。
おまんこで中出しはできなかったけど、これで充分満足できた。
でも……
腹の奥底にたまった欲望は、一時的にすら消えていない。
なぜなら、ボクは複数の男性器型触手を持っているからだ。
その数、三十本余り。
亜由美さんに奉仕してもらったおかげで、さらに数本が増えた。触手は女の子とエッチなことをするたびに増えていくのだ。
残った数十本の触手が獲物を求めている。
目覚めたボクは欲望まみれの『クリーチャー』であった。
▽
学園長室に通された。
殺風景な部屋である。
窓際に大きな机、中央に接客用のソファーセットが設置されているだけで、それ以外はスカスカだった。
壁は一面の白。よくある賞状だの、写真だのは飾られていない。
革張りの椅子に座って引き出しを開けてみる。
やはり空だった。
この学校の学園長や教師たちは「消された」そうだが、存在そのものまで抹消されたかのようである……。
頭を振って怖い想像を消す。
窓から外を見る。
ブルマ姿の女の子たちがランニングをしている。体育の授業だろうか。
ボクは学園長室を出た。
スリッパでぺたぺたと廊下を歩く。
ここの校舎の一階には、学園長室の他に、職員室、事務室などがある。覗くと中はいずれも空っぽだった。
薄ら寒さを感じ、階段で二階へと上がる。
先ほど聞いたところによると、華友女子学園の本校舎は四階建てである。二階は一年生、三階は二年生、四階は三年生の教室になっているという。
各学年四クラスずつ、一クラス当たり生徒四十数名、合計で華友女子学園には五百名以上の生徒が在籍する。
「五百人の処女か……」
つぶやき、教室のひとつをこっそりと覗く。
セーラー服姿の生徒たちが勉学に励んでいた。教師はいない。各自、グループを作って自習のような形だ。真面目なのか、現実逃避か、そういう呪いでもかけられているのか。
他の教室も同じようなものだった。教師が消えたのに、通常通り学園が運営されている。
一階に下り、校庭に出る。
陽に当たって現実感を取り戻したかったのだが、空は意外と狭かった。校庭が校舎で囲まれている。おそらくブルマ姿の女の子たちを校外の目から守っているのだろう。
実際、しゃべりながらだらだらと校庭を周回している、女子生徒たちの姿は、エッチなことこの上なかった。
汗で張り付く背中。
走るたびに揺れる胸。
ブルマ越しに形のわかるお尻。
真っ白な太もも。
目が釘付けとなる。
男を欲情させるための格好としか思えない。
胸のゼッケンによると、彼女たちは二年B組の生徒らしかった。ちらちらと不安げな視線がこちらを向く。ボクに何かされないか心配なようだ。もちろん、何かしたくてたまらないのである。
「み、みんな集合! 二年B組集合!!」
大声で叫ぶ。慣れないことに声が裏返った。
生徒四十名前後が足を止めた。
「こっちこっち」
手招きする。
ためらいがちにブルマ集団が集まり、ボクの前に並んだ。
全員がしっとり汗に濡れ、頬を上気させている。
「え、えーと」
口ごもる。
視線がボクに向く。
人の前に立ったことなどないのでちょっと恥ずかしい。
「全員、体操服をめくって……」
女の子たちの顔色が変わった。
「この変態!」
「なんでそんなことしなきゃならないのよ!!」
「絶対いや!!」
非難囂々である。
あまりの剣幕に、気の小さいボクは隠れたくなった。
「い、いいからやって!」
目をつぶって叫ぶ。
強制力が働いたようだった。
女子生徒たちは歯を食いしばり、ゆっくりと体操服を上げた。
ブラジャーがこぼれる。白系のオーソドックスなタイプから、フリル付きの派手なもの、セクシー系紫、スポーツブラまで様々だった。
あまり大人っぽい下着はボクの好みでない。みんな処女なのだから、女の子らしい可愛いものを身につけるべきだ。今度、校則でそう定めてしまうおうか。ボクが学園長なのである。
「ブラジャーを取って、みんなの胸、見せて……」
ためらう手と目。我慢しながら下を向く。
「やって」
背中に手が回る。
全員、頬を赤く染めていた。
覚悟したような顔、泣きそうな顔、怒り狂った顔、それぞれだ。
ブラジャーが外される。
やわらかいものが弾けて、揺れて、静止した。
ボクの前に人数分のおっぱいが並ぶ。
ある子はバストサイズ九十センチを超えるような巨乳、ある子は小学生のように真っ平ら、ある子は完璧な美乳。この年でかなりの格差が出ていた。
だが、いずれも若々しく、ぷるぷるした張りのあるおっぱいだ。汗で肌が光っている。
頭が沸騰する。全身が震える。
触手がにゅっと飛び出た。
数本の男性器型触手だ……。
生徒たちが悲鳴を上げた。
「だ、大丈夫、なにもしないから。そのまま……ランニング開始!」
信用できない、といった目つきだった。
それでも彼女たちは走り始める。
足のリズムにあわせておっぱいが上下左右にぶるぶる震える。
ゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさゆっさ
ほとんどカップのない子でも乳首の位置が上下した。小さくともそれだけのやわらかさを持っているのだ。
ここで我慢が限界に達した。
大量の触手が破裂するようにどこからともなく飛び出す。
ボクの持つ全ての触手である。
男性器型がちょうど女子生徒全員分。舌型が同数。手足型がその二、三倍ある。
意識が触手に集中し、ボク本体は消えたかのような感覚になる。ひょっとしたら、こういうときは実際に身体が消えているのかもしれない。
触手が伸びて、おっぱい丸出しの女子学生たちを追いかける。
一人が振り向く。
気付かれた。
「キャアアアアアアアアアア!!」
すごい悲鳴だった。
みな、涙目で必死に逃げる。
それを追いかける。
触手の伸びる限界はボク本体から百メートル前後。
速度はこちらの方が速い。
すぐさま追いつく。
足をつかもうとして、転ばせたらいけないことに気付く。
手首に触手を絡みつかせる。
「いやあああああああ!!」
振りほどこうとするが無駄だ。触手の力は強い。
おっぱいがぷるぷるする。
ますます興奮し、腰にとりつき、引っ張る。
身体が一瞬浮き上がる。
捕まえた。
「ああああああああああああっ!!!!」
ブルマっ子狩りは楽しい。生徒たちは次々とボクの手に落ちていった。
「離して!」
と、叫びながら暴れる子。
とにかく泣き出す子。
反応は様々だ。
「大丈夫大丈夫、ちょ、ちょっと触るだけだから」
触手の先端でブルマのお尻をなでる。
「うひゃっ」
一人が変な声を出した。
「やめて!」
払おうとする手を、触手でつかむ。
ブルマというのは単なる一枚の薄布であった。お尻を覆い、腰でとまっているだけだ。動きやすいだろうが無防備である。
布の肌触りは想像以上に良い。さらさら、ざらざらとなでまわす。
「やっ……」
お尻の形も胸と同様に様々だ。
広がったお尻を持ち上げる。触手に肉が食い込む。
きゅっとしまった別のお尻を押して弾力を確かめる。
ほとんど肉のついてない子もいた。薄尻だ。
「こっちの方も……」
舌の触手を伸ばした。
露出した乳首をツンツンする。
「ひぁっ!」
「やっ!」
みんなすでに乳首が立っていた。舌をぐりぐり押しつける。
「やーーーーっ!!」
必死にもがいて逃れようとする。
「ひくっ!!」
すでに抵抗を諦めていた女子も身をよじる。
「んふぁっ」
「はぅぅぅぅぅ」
肩と腰がくねくね動く。
息が荒くなってくる。
いったん責めるのをやめる。乳首とお尻から触手を離す。
乳首がボクの唾液でぬらぬらしている。
「気持ち悪いよう……」
「も、もういいでしょ、離して……」
手足を拘束されたまま、涙を浮かべながら生徒たちは懇願する。
「ごめん、もうちょっとだけ」
ボクは謝って、舌を全員の口に突っ込んだ。
「んーっ!」
手で胸をいじりつつ、お尻にチンポをおしあてる。
フェラチオさせるかのように舌を動かす。
「んふっ!!」
「んーーーーー」
強引に身体をもてあそばれ、恐怖と嫌悪感のうめき。
だが、ボクの欲望は収まらない。
チンチン触手をグリグリ押しつける。
お尻の弾力とブルマの感触。
「ご、ゴメン、もう我慢できない。入れてもいいよね……?」
「んーっ!!」
涙目で首を振る。
「処女をもらって、中に生で射精するだけだから……」
必死に身体をよじって抵抗。
「本当にゴメン。入れるね……っ!!」
ブルマをずらそうとして興奮が頂点に達した。
その瞬間、出してしまった。
びゅくくくくっ!
紺色のブルマに白い粘液が飛ぶ。
びゅくくっ! びゅくっびゅくっびゅくっびゅくっびゅくっ
ボクの濃厚な精子が降り注ぐ。
「アハハ、出しちゃった」
ボクは恥ずかしくなって笑った。押しつけていただけなのに、気持ちよくなって射精してしまうなんて……
ブルマはどろどろになっていた。精液のうち半分は生地にしみこみ、ぬるぬるした成分がその上に乗る。
「でも、ブルマだから少しくらい汚れたっていいよね」
口から舌を抜く。とろりと唾液の糸が引く。
今度はそれぞれの口の前に、出し終わったチンポを突きつける。もちろん白濁液まみれだ。
「なめてきれいにして」
女の子たちは全員が泣いていた。
どれだけ屈辱を感じていても、恐怖や無力を感じていても、命令通り、舌を伸ばさざるを得ない。
「……」
泣きながら、精液をなめとっていく。
かわりに女の子たちの赤い舌がボクの白いもので汚れる。
「はぁ」
綺麗に掃除して貰って、ため息をつく。
とりあえずは、すっきりした。数十人分の欲望を一気に吐き出した。
触手が消えていく。
同時にボクの身体の感覚が戻った。
ここまで深く満足出来たのは久しぶりだった。
目の前には、胸をまくり、口、乳首、お尻をボクの体液で汚された女子生徒たちがいる。挿入出来なかったとしても、これはこれでいい。
「じゃあ……、ランニング再開」
ボクは朗らかな笑顔で手を叩いた。
二年B組の生徒たちは泣きながら走り出した。
第六話に続く