―レッスン中―
「彼の者の袋に蓄えられし尿水よ、我が袋に宿れ……んんっ!」
トプンッ。
姫が用を足す寸前に、こっそりと呪文を口にする。
これから悪戯するつもりだったので、普段どおりの方法で用を足させるわけにはいかなかった。
呪文を唱え終わると同時に、急にお腹の辺りが重たくなってくる。
どうやら彼女が抱えていた尿水が、私のお腹に溜まってきたらしい。
「あら、どうして出てこないのかしら……それに、お腹も落ち着いちゃってるみたいだし。すぐ戻らなくっちゃ?」
シュルシュルシュルッ。
下腹部の重みを耐え忍んでいると、カトリーヌ姫が頭を捻り始める。
すぐにでも用を足すつもりでいたのに、いきなり尿意が消え失せてしまったのだからさすがに驚いても無理はない。
膝まで下ろしていたタイツやレオタードを持ち上げている間も、不思議そうにお腹の様子を覗き込む。いくら尿水を移しても、出っ張ったお腹は早々簡単に引っ込まないみたいだ。
着替えを済ませると、そそくさと裏庭から立ち去って稽古場の方へと向かい出す。
* * * * * *
「もう、カトリーヌ姫ってば一体どう言うつもりなの? 時間が勿体ないんだから、しっかりレッスンを始めるざます!」
稽古場に引き返すと、講師が口うるさく注意をぶつけてくる。
これからレッスンを始めようとした直前に、いきなり稽古場から出て行ったのが気に食わなかったらしい。
目の前にいる姫を叱りつけながら、今度こそレッスンを始めるよう言い放つ。
ただでさえ出来が悪いみたいなのに、本当にこんな調子で無事にレッスンを乗り切れるのだろうか……?
「何度も練習したはずじゃない! ほら、もっとしっかり脚を上げなさい!」
「そんなこと言われたって……も、もうこれ以上は無理ぃっ!?」
プルプルプルッ……
講師が取り仕切るまま、姫は再びレッスンを始める。
合図に合わせて片脚を持ち上げている間も、すぐに背筋をくねらせてしまう……今晩には晩餐会で社交ダンスを踊らなければいけないと言うのに、はっきり言って見るに堪えない出来栄えだ。
どうやら講師も出来の悪さに頭を抱えているらしく、さすがに文句をこぼさずにいられないらしい。
丸太のように太い脚を持ち上げたまま額に汗を浮かべている様子など、滑稽としか表現しようがなかった。
* * * * * *
「ふぅっ、これで晩餐会のダンスもちゃんと踊れそうね……やだ、もうこんな時間になっちゃった! ちゃんとドレスが出来上がってるか、しっかり見ておかなくっちゃ!」
幾度となく講師に叱られているうちに、ついにレッスンが終わった。
汗ばんだレオタードを脱ぎ去った後、ブラウスとジャンパースカートに袖を通すと大慌てで馬車へと乗り込む。
レッスンをこなした後、新調したドレスを取りに仕立て屋へ向かう予定になっていたのだ。
まだ講師から合格点すら貰えていないのに、本当にこのままレッスンを切り上げてしまうつもりなんだろうか……?
タプンッ。
(やだ、こんなにお腹が重たくなってきちゃって……さすがに、ちょっと苦しくてたまらないかも?)
姫の後をついていく間も、すぐに脚の動きが鈍ってくる。
先ほど唱えた呪文のせいで、今度は私が尿意を催し始めていたのだ。
脚を持ち上げるたびに波打ってくる尿水が、とにかく苦しくてたまらない……昨晩のうちに蓄えていた分と、姫の体内に留まっていた分まで膀胱の中に溜まっているはずだった。
下半身の欲求を堪えているだけでも辛いのに、身体の中に姫の尿水が溜まっていると思うだけで、言い表しようのない気まずさをありありと思い知らされる……