―レッスン中―
「……我が袋に蓄えられし尿水よ、彼の者の袋に宿れ!」
姫様に気づかれないよう、小声でこっそりと呪文を唱えていく。
対象者の下半身をじっと見つめたまま、魔導書に刻まれていた呪文を口にする……これで自分の膀胱に溜まっていた尿水を、相手の身体に移せるはずだ。
呪文を言い切った後も、つい姫の様子を気にせずにいられない。
ちゃんと効き目が現れてくれるかも心配だし、おかしな独り言を呟いている事実を下手に知られてしまっても、私の正体を疑われかねないのだ。
私の心配とは裏腹に、朝からずっと用足しを我慢してずっと張り詰めていた膀胱が段々と軽くなっていく。
「……ひうぅっ!」
フルフルフルッ……
呪文を言い切った途端、カトリーヌ姫がおかしな仕草を見せ始める。
その場に立ち尽くしたまま、いきなり身震いを引き起こす……どうやら体内に抱えていた尿水が、そのまま彼女の身体に移ってしまったようだ。
まるで豚の脚を思わせるような太股をくねらせている様子など、傍で見ているだけで滑稽でたまらない。
レッスンの前に用を足したばかりなのに、またしても尿意を催してしまって、きっと姫も驚いて当然なはずだ。
「カトリーヌ姫、一体どうなさったんですか? もう身体も解れたことですし、さっさとレッスンを始めるざます!」
姫のおかしな様子が気になったのか、いきなり講師が言葉を切り出す。
これからレッスンを始めるつもりでいたのに、突然落ち着きを失っているのが気になってたまらないらしい。
すぐにでもレッスンを始めるよう、すぐ本人に注意をぶつけてくる。
「ちょ、ちょっと待って。ちょっとだけ、お花を摘みに行かせて欲しいの……くうぅっ!」
ヨロヨロヨロッ、バタンッ!
講師に恐る恐る返事を返しながら、姫は予想外の行動を取り始める。
身震いを続けながら、はしたない告白を口走る……もうレッスンの時間なのに、尿意を催したので用を足したいと自ら講師に断りを入れるなどさすがに思いもしなかった。
人目も憚らず下半身の状態を自ら明かしてしまうなど、何と恥知らずな振る舞いなのだろうか?
気づいたら相手の返事も待たずに、勝手に稽古場から抜け出してしまっていたのだ。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」
ミシッ、ミシッ、ミシッ。
通路を歩き回っている間も、姫ははしたない素振りを繰り広げていく。
よほど慌てているのか、何度も床を踏み鳴らしていたのだ。
後を追い掛けるのも大変なほど、よほど切羽詰まった状況に追い込まれているらしい。
後をついていく間も、広げっ放しの両脚に思わず視線を奪われてしまう。
どうやら裏庭に向かうだけで精一杯らしく、周りのことになど少しも注意を払えそうにないのだろう……
* * * * * *
「も、もう我慢できない……ミマ、早く準備してっ!」
ズルズルズルッ、ヒクヒクヒクッ……
裏庭に辿り着いた途端、姫はとんでもない格好を見せつけてくる。
私しかいないのを良いことに、着込んでいたレオタードを脱ぎ去って下半身を丸出しにしていたのだ。
大きなお尻を向けたまま私の方を振り返って、すぐに言葉をぶつけてくる。
これから彼女のために、用足しの準備に取り掛からなければいけないのだ……