おてんば姫を一瞬で糞尿まみれにさせる方法 体験版

―決行前夜―

ペラッ……
「これもちょっと複雑過ぎるし……このままじゃ明日の朝に起きれなくなっちゃいそう?」

 すべての業務をやり遂げた後、私は床で書物を開いていた。
 一枚ずつページを捲っては、薄暗いランプの光を頼りに内容を確かめている間も自然と瞼が重たくなってくる。
 夜遅くまでメイドとしての仕事をこなしたばかりなのに、分厚い本を読むのがさすがに辛くてたまらない。
 段々と視界が霞んでくるけど大事な目的を何としても果たしたかったので、こんな程度で音を上げているわけにはかないのだ。

(さすがに眠くてたまらないけど……何とかして姫に仕返ししなきゃいけないんだから。もうちょっとだけ頑張らなくっちゃ!)

 眠い目を擦りながら、私はひたむきに魔導書を読み耽っていく。



 私はミマと言う宮殿に住み込みで働いているメイドで、まだ新入りなせいか姫の身の回りのお世話を――時には下のお世話まで引き受けることもある、非常に損な役回りを押しつけられている身なんだけど、誰にも明かしていない、特別な秘密を抱えている。
 これでも私は魔女の末裔で、普通の人間では決して持ち合わせていない魔力を秘めている、当然ながら呪文だって使えるのだ……軽い悪戯程度の、他愛もない程度のものなら。
 どうして私が夜な夜な魔導書を開いているのかと言うと、これから私が仕えている姫に『復讐』するための呪文を探しているのだ。
 つい数ヶ月前、私達が住んでいた森が『魔女狩り』に遭ってしまったので、自分達の一族が迫害された仕返しを何としてもやり遂げなければいけなかった。
 人間達からすれば奇妙で忌み嫌われても仕方がない存在かもしれないけど、私達だって同じ人間だ。
 故郷を追われた沢山の同胞達の無念を晴らすため、魔導書を片手に復讐の手立てをひたすら練っていく……

ピラッ……
「もしかしたら、この呪文なら……仕返しに丁度いいかもしれない!」

 延々と魔導書を眺めているうちに、あるページが目に飛び込んでくる。
 簡単に説明すると体内に抱えている糞尿を移すと言う内容のものだった。
 ちなみに対象者は自分と相手一人で、おおよそこんな現象を引き起こせるらしい……



『我が袋に蓄えられし尿水よ、彼の者の袋に宿れ』
――自分の膀胱に溜まっている尿水を、相手の膀胱に移すための呪文だ。

『彼の者の袋に蓄えられし尿水よ、我が袋に宿れ』
――こちらは逆に、相手の膀胱に溜まっている尿水を自分の膀胱に移すための呪文だ。一体、どんな使い道があるんだろうか?

『彼の者の袋に蓄えられし尿水よ、我がはらわたに宿れ』
――こちらも似たような呪文らしく、相手の膀胱に溜まっている尿水を、どうやら自分のお腹に移すための呪文らしい。ますます使い道が分からない。

『我が袋に蓄えられし尿水よ、彼の者の腸に宿れ』
――自分の膀胱に溜まっている尿水を、相手のお腹に移すための呪文のようだ。いまいち使い道が分からなかった呪文と組み合わせれば使い物になるかもしれない。

『彼の者の腸に募りし糞塊よ、我が腸に宿れ』
――また使い道の分からない呪文が出てきた。こちらは相手のお腹に溜まっている糞便を自分のお腹に移すための呪文らしい。

『我が腸に募りし糞塊よ、彼の者の腸に宿れ』
――これが最後の呪文で、自分のお腹に溜まっていた糞便を相手のお腹に移す呪文のようだ。やはり、使い道が不明な呪文と組み合わせて使うような代物なのだろうか?

 ここまで読んでいて気づいたことがあるけど、例えば糞便を膀胱に移したり、腸内に溜まっているものを膀胱に再び移すと言った類の行為は出来ないようだ。いくら魔女の呪文と言っても、人の身体に害を成すような行為は出来そうにないらしい……



パタンッ。
「……よし、呪文もしっかり覚えたことだし。明日はたっぷり、お姫様を酷い目に遭わせてやるんだから……!」



 しっかりと呪文の内容に目を通した後、そそくさと魔導書を仕舞い込む。
 糞尿を移動させる術なんて一見、使い道がない呪文のように思えるけど、身近で姫のお世話をしている私にとっては好都合だった。
 どんな風に姫を辱めてしまおうか、考えるだけで胸が弾んできてたまらない。
 明日は王子様を招いて晩餐会やパーティーを繰り広げる予定だったので、大勢の前で立場を貶められる絶好の機会だ。
 覚え立ての呪文をちゃんと使いこなせるかちょっと不安だけど、あの姫にたっぷり惨めな思いをさせてやらなくっちゃ……?