01
「……きゃぁっ! 誰か、助けてぇっ……!?」
グニュルグニュルグニュル……
放課後の学園に、突如として異変が引き起こされる。
軟体生物を思わせるような触手が、地面から突然飛び出してきたのだ。
おかしな事態に出くわした女生徒達もその場に立ち往生したまま、つい悲鳴を撒き散らさずにいられない。
「またネメシスの連中が学校を襲って来ちゃってるなんて! すぐ助けに向かわなくっちゃ……変身っ!」
パアアアァァァ……
校庭から聞こえてきた悲鳴に気づいて女生徒の一人、青山 麻鈴と言う女生徒がすぐに駆けつける。
他の生徒達が被害に遭わないうちに、学校に出現した触手をすぐ退治するつもりでいたのだ。
掛け声に合わせて、身に着けていた制服がみるみるうちにコスチュームへと変化する。
学園を守る正義のヒロイン、マリーン・サファイアへと変貌を遂げていたのだ。
「あなた、ネメシスの一員ね! 今度こそ、あなた達をやっつけてやるんだから……!」
変身を済ませた後、マリーン・サファイアは遠くにいる人影へ文句をぶつける。
学園の校庭に触手を仕向けていた張本人が、目の前へと立ちはだかっていたのだ。
相手の姿を睨んでいる間も、つい背筋を張り詰めずにいられない。
「あら、マリーン・サファイア。もうやってきてしまったの? こっちこそ邪魔されっ放しだった分、たっぷり返り討ちにしてやるんだから。今のうちに覚悟しておきなさい?」
マリーン・サファイアの姿を見かけて、黒いドレスに身を包んでいる相手は挑発的な言葉を平然と口走る。
放課後を狙って女生徒達に悪戯を仕掛けるつもりでいたのに、いきなり邪魔させられるなど思いもしなかった。
計画を邪魔してくる目障りな相手を、これから酷い目に合わせるつもりでいたのだ。
「そんな簡単にやられるわけにはいかないんだから……しまった!」
ガシッ!
相手に立ち向かおうとした矢先、マリーン・サファイアはあっけなく窮地へと陥ってしまう。
いきなり背後から触手が生え伸びてきて、まんまと捉えられてしまったのだ。
慌てて後ろを振り返ったまま、つい茫然とせずにいられない。
女生徒達を危機から救い出すつもりでいたのに、思わぬ形で足止めを食らってしまったのだ。
「くうぅっ……! お、お願いだから離れてぇっ!?」
ミシミシミシィッ……!
しつこく絡みついてくる触手を追い払おうと、マリーン・サファイアは必死の思いで身を捩らせる。
必死の思いでもがき続けているはずなのに、なかなか思うように触手を振り払えそうになかった。
弾力性のある肌触りが、何とも薄気味悪くてたまらない。
なかなか身動きが取れそうにない中、おかしな焦りに苛まれてしまうのだ。
「残念ね、マリーン・サファイア。何度も楯突いてきて目障りだから、たっぷりお仕置きしてあげなくっちゃ……?」
困り果てているマリーン・サファイアの姿を、黒いドレスの女幹部は平然と見据える。
無謀にも邪魔をしに来た相手があっけなく触手に掴まってしまっている様子に、さすがに拍子抜けさせられていたのだ。
頬をこわばらせている少女へと向けて、不敵な言葉を投げ掛ける。
二度と自分達に刃向かえないよう、特殊な呪印を体内に刻んで肉体改造を施すつもりでいたのだ……