体験版 プロローグ
「よい、しょっと……」
ドサッ。
球技大会の最中、ボクは芝生で寝転んでいた。
大体、こんな暖かい日に眠くならない方がどうかしている。
校庭でボールが飛び交う様子を見ているだけで、段々と意識が薄れていく。
出番までまだ時間も残ってるし、とにかく退屈でたまんない。
「ねぇ、一体どうしてそんな所で寝ちゃってるの? まだ球技大会の途中なのに……」
「あれ、もしかして……笹倉さん!?」
ガバッ。
ボーっとしていると、いきなり誰かが話し掛けてくる。
最初はサボっているのを先生に気づかれちゃったかと思ったけど、どうやら予想が外れたらしい。
聞き覚えのある声の正体が気になって起きてみると、
委員会で顔を合わせたことがある程度の付き合いだったけど、一体どんな理由でボクなんかに話し掛けてきちゃったんだろう?
「もしかして、驚かせちゃった? そう言えば、こうやって会うのも委員会の時以来だったよね。まさかあの時、あんなに先生に文句を言ってきちゃうなんて本当に思わなかったから。あの時はさすがに私もびっくりしちゃったよ……?」
「あぁ、あのことか……どうしても無視できそうになかったから、たまたまムキになっちゃっただけだよ」
笹倉先輩の話に耳を傾けていると、どうやら委員会での出来事がきっかけでボクのことを気にし始めたらしい。
数日前の委員会で、どうしても聞き逃せない発言があったので気にくわない教師に楯突いたことがあった……どうやら彼女もあの出来事を覚えていたらしく、ボクのことがずっと気になっていたみたいだ。
そっと返事を返している間も、何と言うか照れくさくてたまらない。
我ながら、あの時は大人げないことをしちゃったと反省していたのに……
「やだ、もうこんな時間になっちゃったんだ……それじゃ私の出番が来ちゃったみたいだから、じゃあね?」
タッタッタッタッ……
しばらく雑談していると、笹倉先輩は急に立ち上がる。
どうやら、もう笹倉先輩の出番がやってきてしまったらしい。
校庭の方へ向かっていく間も、ウェーブの掛かった髪をなびかせていく。
後ろ姿をこっそり見届けているうちに、ブルマに包まれたお尻につい注目せずにいられない。
「んんっ……うぐっ!?」
ガバッ。
一人っきりになったのでまた芝生で寝転んでいると、いきなりお腹を圧迫させられる。
どうやら、誰かがふざけて乗っかってきたみたいだ。
相手の正体を探ろうと、少しずつ上半身を持ち上げる。
この柔らかい肌触り、もしかして相手は女子だったりするんだろうか……?
「久しぶり、お兄ちゃん。私のこと、ちゃんと覚えてる……?」
「そ、その声! もしかして……咲希、なのか?」
目の前にいる相手の姿に、ボクは思わず目を疑ってしまう。
随分と見覚えのある顔立ちや声をしていると思ったら、何と従妹の
小さな頃に遊んで以来なのに、どうやらボクのことを覚えているらしい。
随分と背も伸びたみたいだけど、可愛らしい笑顔は相変わらずだ。
「もしかして、ビックリしちゃった? 最近こっちに引っ越してきたばかりで。まさかお兄ちゃんもこの学校に通っちゃってたなんて、ホントに思わなかったんだから……?」
咲希と一緒にお喋りしているうちに、色んなことを自分から語ってくる。
どうやら最近こっちに引っ越してきたらしく、ボクと同じ学園に通うことになったらしい。
それにしても、今日は本当に色んな出来事に出くわす日だ。
笹倉先輩に話し掛けられたり、咲希とこんな形で出会うことになっちゃうなんて、さすがに予想外だった……