---討伐---
それからしばらく二人で旅していると大きな街にたどり着いた。人がたくさんいる。
「こんなにたくさんの人を見るのは久しぶりじゃな」
ちょっとギルドに行ってみてもいい。
「いいぞ。登録するのかの」
前に登録したんだけど籍は残ってるのかなと思って。
「行ってみればわかるじゃろ」
だね。冒険者ギルドに入りカウンターへと向かう。
「冒険者ギルドへようこそ。どういったご用件ですか」
「これってまだ有効ですか」
冒険者登録証であるカードを取り出して渡す。
「少々お待ちくださいませ」
どのくらいあの場所にいたかわからないからな。カードに期限とかあったのだろうか。覚えていない。
「お待たせいたしました。はい有効です」
カードを受け取り確認する。Fランクの文字が浮かび上がる。
「お、お主Fランクなのか」
だから俺戦えないって言ったじゃん。
「そうじゃったな。すまんすまん」
そうか、これからは戦えるからランク上げるのもいいのか。
「そうする事で生きやすくなるのなら良いのではないか」
それじゃあしばらくはランクを上げる目標でいいかな。
「うむ、任せるのじゃ」
ランクを上げるためには同ランクか一つ上のランクの依頼を規定数もしくはそれに準ずるレベルで達成すればいい。採取系の依頼は大変なので討伐系の依頼にしよう。
ゴブリンの討伐は常にある。様子見でやってみるか。
「我にかかれば楽勝じゃな」
そうだと思うけどまぁ順番にね。依頼書をカウンターに持って行く。
「一人だと危険だと思いますよ」
受付の人が心配そうな顔でこちらを見てくる。
「連れがいるので大丈夫です」
「パーティ登録されていないようですが」
「ランクが離れてるので少し手伝ってもらう感じですかね」
「そうなんですね。失礼しました。お気をつけて」
「ありがとうございます」
ゴブリンは放っておいても勝手に増え続ける。だからいなくなることはない。そして増えると人間を積極的に襲い始める。単体では大したことなくても集まれば危険な強さになる。数は力だ。だから定期的に駆除する必要がある。
ギルドを出てゴブリンの目撃情報があった場所へと向かう。
「どうやって討伐したかを確認するのじゃ」
身体の一部を持って行くんだよ。
「なるほど」
部位によっては証明になるだけじゃくて買取もしてもらえるよ。
「そうなんじゃな」
というか魔物の素材が依頼内容になっているものもあるからね。
「ふむふむ。道端にいる魔物の素材を集めておくのも良いのか」
そうか。今なら倒せるのか。ただ自分のランクが低いのに持って行ったら怪しまれるかもね。
「確かにそれはあるかもしれんの」
素材はものによっては腐ってしまうし保管できる場所があるといいんだけど。
「それなら我が保管しておこうかの」
そんなことできるの。
「容易いことじゃ」
まじか、これでいくらでも魔物の素材を集めることができるのか。
「そんなに驚くことなのかの」
普通は素材そんなにたくさん持てないし保存できないからね。
「人間とは不便なものよの」
のーたんが凄すぎるんだよ。
「もっと褒めても良いぞ」
のーたんのおかげで凄く助かるよ。
「お主褒めるの下手じゃな」
上手く言葉が出て来なくて。
「知っておる」
ふふっ。
そんな話をしながら移動しているとゴブリンの住処についた。
この洞窟か。
「燃やすのは良くないかの」
身体の一部を回収しないといけないから。耳とかかな。
「それじゃあ耳を残して消滅させるか」
えっ。
「切り刻んだりしたら汚いじゃろ」
確かに耳だけ残せるんだったらそれが一番いいかも。
「お主は歩いて奥まで行ってくれれば良い」
ありがとう。でも不意打ちとか防げるの。
「お主には三重にバリアを張っておるからの」
そうなんだ。
「うむ、だから基本的には何があっても大丈夫じゃ」
頼もしい。それじゃあ進むからよろしくね。
「ふむ」
洞窟の中は薄暗い。ところどころゴブリンの仕業か光がある。魔法だろうか。もしくは人間から道具を奪ったのだろうか。どちらにしても倒すから問題ないか。それにしても先ほどから全然ゴブリンと遭遇しない。本当にいるのだろうか。
「我が倒して耳を回収しておるからな」
視界に入る前に倒してくれてるの。
「そうじゃ、ゴブリンなぞ見ても何の得にもならんからの」
確かにそうかもしれないけれど。自分は歩くだけでいいなんて。
「我は歩いてすらおらんからな」
それは、指輪になってるから歩けないよね。
「うむ」
奥までたどり着いた。色々なものが散乱している。人間から奪ったものだろう。思ったより空気が淀んでいない。もっと酷いことになっていると思ったのだが。もしかして。
「よくわかっておるではないか」
やっぱり。ありがとう。ほんと助かるよ。
「それでは帰るのじゃ」
うん。
のーたんのおかげで暗い気持ちにならずに済んだ。
洞窟から出て街へと向かう。人前で取り出したら驚かれるだろう。裏道で人がいないのを確認し、のーたんからゴブリンの耳を受け取る。破れた時用に大きな袋を三つほど用意していたのだが、それでも全部入りきらなかった。とりあえず詰めるだけ詰めた。
こんなにいたのか。
「かなり増えておったの」
ギルドの受付に移動する。
「あの、報告はここで大丈夫ですか」
なかなかに重たい。
「ええっ、そんなにたくさんっ、何が。あっ、魔物討伐の報告ならこちらではなくあちらになります」
そう言われて見てみると向こう側へと続く通路があった。
「ありがとうございます」
「い、いえ」
素材を受け渡す場所が別にあるらしい。確かにそうだよな。大きな素材とかもあるだろうし。
引きずりながら目的の場所へと移動しギルドカードと耳を渡した。
「おっ、これ一人で倒したのか」
屈強なおじさんが訝しげな表情でこちらを見てくる。
「いえ友人と」
「その友人は」
「来られないので一人で来ました」
「貢献度はこのカードに入れていいの」
「はい、お願いします」
「確認だけど、友人には入らないよ」
「自分よりずっと上なので大丈夫です」
「そういうことか、ちょっと待ってな」
「はい」
しばらくしてギルドカードを受け取った。
「あんな綺麗な状態の耳初めてだよ」
「そうなんですか」
「友人は相当なレベルなんだろうね」
「助かってます」
「もっと強い魔物の素材も頼むよ」
「伝えておきます」
「よろしくっ」
良い素材が今後入るかもと思ってか何だかフレンドリーな感じがする。これは何か良い素材を持って来たいな。
「はい、ありがとうございました」
ランクがEに上がっていた。こんなに簡単にランクが上がるなんて。
「我に感謝すると良い」
ありがとう。のーたん何か食べたい物ある。
「んーそうじゃな、お主の好きな物でよいぞ」
りょーかい。
-翌日-
今日も依頼受けようと思うけど大丈夫。
「もちろんじゃ」
そういえば魔法ってどのくらい使えるの。
「属性についてか、それとも使用時間についてかの」
時間かな。
「規模にもよるが一日中くらいならいけるんじゃないかの」
魔法って魔力を消費するんだよね。
「そうじゃな」
とんでもない魔力量の持ち主なのか。魔力ってどうやったら回復するの。
「基本的には使わなければ自然と回復するの」
そうなんだ。回復速度を早めたりできるのかな。
「人間だと寝たり食べたりでも回復するんじゃないかの」
ふむふむ。魔法ってどうやって覚えたの。
「我は物心ついたときから既に知っておったの」
それチートレベルだね。
「そんな事はない」
そうなの。
「魔法使うのにも代償はあるからの」
そうなんだ。無限に使えるのかと思ってた。
「何かをしたり得たりは代償が必要じゃ」
のーたんでもそうなのか。
「世の理じゃな」
ふむ。
---next---