「あぁ、リルさまぁぁぁぁぁぁ! お許しくださいぃぃぃぃ!」    十歳の少年は明かりを落とした暗い部屋で自分のぺ●スに黒いパンプスを押し当ててひたすら叫んでいた。    もう片方の手にもパンストが握りしめられ、顔に押し当てている。    履き古されたパンプスは時間が経っても尚、もわっとした臭いを放っていた。    少年は隅々までそれらを吸いとるように深呼吸し、澱んだ空気を吸い込む。    ギザギザのパンプスの靴底は少年のぺ●スから溢れたものでみるみる滑りを加速させ、乱暴とも言えるほどの速度は痛みすら感じるだろう。    だが、少年はその激しい刺激にな身体を震わせながら、絶叫していた。    シコシコシコシコ!    ジュル、ジュプ、ジュル。    淫靡な音を立てながら履き古したパンプスを口に咥え、口元や舌が汚れていくにもかかわらず、舐めていく。    さらに靴底を顔に押しあて、グリグリと擦り付けていた。    ジュコ、ジュコ、シュコ――。    他人の靴を舐める。    人間どころか奴隷にすら躊躇うようなそんな行為を少年は恍惚とした表情で行っていた。    我慢汁が潤滑油となって少年のぺ●スは真っ赤になりながらますます硬くなっていき--。   「んぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」    絶叫とともに噴き出した白い精液が真っ黒いパンプスを汚し、白と黒のコントラストを描いた。    絶頂した少年は大の字に床に倒れ、脱力感と快感の余韻に身を委ねていた。    狂ったような自慰行為。    決して他人には見せられない恥態だ。    まして、このパンプスの持ち主には--。    だが、少年は気づいていなかった。    自慰に夢中で扉がわずかに開かれていなかったことを--。    ★    このクラウス家は王国の貴族の一つだ。    この屋敷の主はたった十歳の少年、エルヴィス。    父親は王都で仕事をしており、年に数回しか帰ってこない。    母親も同じだ。    領地経営などを学ぶ反面、エルヴィスは愛情に飢えていた。    そんな彼のお気に入りは物心ついた時から屋敷にいるメイドのリルだ。    年上で、無感情の彼女だが、エルヴィスが求めれば何でもしてくれる。    そんな彼女にエルヴィスはべったりだった。    リル、本読んで!    リル、お昼寝して!    リル、遊ぼ!    小さいときからそうであり、リルが母親の様に感じていた。    だが、年齢があがり、教育を受けるにつれて、それが違うものだとわかってくる。    リルは外の世界では奴隷だ。    謂わば、クラウス家の所有物であり、人権など認められてない。    彼女が無感情で従順なのはそのせいなのだろうか?    父が奴隷として管理しているからわからないが、命令違反を行えば厳しい処分もありえるのかもしれない。    だが、リルはリルだ。    エルヴィスにとって優しい何でもしてくれるお姉さん、母親的なものだった。    そして、そのまま時がすぎ、十歳になる。    エルヴィスも思春期なった。    ただ、貴族には恋愛での結婚はほとんどないく政略結婚がほとんどだ。    婚約者と顔をあわすのが、結婚式当日なんてのも珍しくない。    そして、エルヴィスはまともな恋愛もなく思春期に入ってしまっていた。    そして――。    ★    私がこの屋敷に来てから何年になるだろう。    慈悲深い旦那様が私を拾ってくださり、奴隷と言う最低の身分でありながら人間らしい生活を送れていたのは、このクラウス家の方々が人格者だからに他ならない。    他の屋敷の奴隷は鞭打たれたり、馬車馬として使い潰されたり、性処理の肉人形として壊されたりする。    奴隷の末路はそんなところだ。    恋愛のない婚約や重圧での生活で性癖が歪む貴族は多い。    それが奴隷を殴り殺してしまったり、鞭でうちつけたり、辱しめたりといっ行為に繋がるらしい。    される側にはたまったものではない。    そして、私はそちら側なのだから。    なので、思春期に入りつつあったエルヴィス様にそんな性癖が芽生えないか私は日々怯えていた。    そして、エルヴィス様の様子が最近変なのだ。    熱っぽい視線で外で庭の手入れをしている私を眺めたりすることがあり、そちらを見るといつも視線を逸らしてしまう。    用件があれば呼び出すはずなのに、何故――。    だが、変な兆候は危険だ。    もし、この国の貴族と同じようにになってしまっていたら私の末路も他の奴隷と同じになる。    だから、私は意を決して調べることにした。    そして――。    理由が判明したのはエルヴィス様の部屋を夜に覗いてしまったからだ。    夜の屋敷の見回り――。    昔から私が嫌いな業務の一つだった。    メイド見習いだった聞かされた怪談の数々が未だに頭から離れてないからだ。    私はランプを片手に窓の戸締まりを確認していた。    すると――。    ウウウウウウウウウ。   「?」    何処かから呻き声のような不気味な音が響いている。    まるで苦悶の声だ。    誰か拷問でもされている。    だが、この屋敷でそんなのをする人間はいない――はずだ。    実はエルヴィス様が夜な夜な誰かを拷問してるなら話は変わるが――。    もしそうじゃなかったら?    まさか幽霊とかゾンビとかじゃないよね?    気になってしまうとどうしようものないのが人間の好奇心だ。    私は忍び足で音がしている方へと進んでいった。    ★   (ここってエルヴィス様の部屋よね?)    なんでここから声が?    本当に拷問の趣味に目覚めたとか?    そうなったらどうしよう。    奴隷である私にメイドを辞める選択肢はない。    であれば、知らないをふりをして響き怯えて暮らすしかない。    私はうるさいほど鳴る心臓を押さえながら、わずかに開いていたドアの隙間から覗き――。    見てしまった。    エルヴィス様の歪んだ性癖を。    同時に笑ってしまった。    将来の主の弱味を――。    私は気づかれないように足音を殺してその場を去った。    頭の中でとある計画を練りながら――。